
ビジネスの場において、会社の代表として話すときに「弊社」「当社」といった自社を示す言葉を正しく使うことはとても重要です。うっかり相手の会社を示す「御社」を使ってしまったら、内容によっては失礼にあたることも。ビジネス機会の損失につながるような事態は避けたいです。
そこで今回は、そうした間違いを防ぐために、「弊社」「当社」といった自社を示す言葉の意味や使う場面についてくわしくまとめてみました。
「弊社」の意味とは?
「弊社」と「当社」の使い分けを知るには、「弊社」がそもそもどういう意味なのかを知っておく必要があります。
「弊社」は自身が勤める会社を指す言葉
「弊社」は、話し手である自身が勤める会社のことを指します。自身の所属していない会社を「弊社」という呼び方はしません。「弊」という使い慣れない漢字があるためか、相手の会社を指す「御社」と混同してしまいがちな人も少なくないかもしれません。
「弊」は「くたびれた」という意味
「弊」という字は「疲れる・倒れる」という意味を持ち、主に「疲弊」「弊害」といった単語に用いられ、「くたびれてボロボロ」の状態を表しています。そのため、「弊社」は「くたびれてボロボロの会社」という意味を表す言葉になります。ただし、実際に「くたびれてボロボロの会社」ということはなく、自身を下げることで相手に礼儀を示す日本ならではの表現といえるでしょう。
「弊社」は社外に向けて使う
「弊社」は自分の会社をへりくだった表現にすることで、相手の会社の位を上げる言い方となり、社内で自分の会社を「弊社」とへりくだっていう必要はありません。この「弊社」は口語表現や文語表現としても使えるので、社外の人を相手に話すときや、社外の人に向けたメールや資料などでも使うことができます。
「当社」の意味とは?
「弊社」と混同されがちな言葉で、「当社」という表現もあります。「当社」の意味を理解して、「弊社」との使い分けができるようにしましょう。
「当社」も自身の会社を指す言葉
「当社」も「弊社」と同じく自身の会社を指す言葉です。「当社」は自分の会社を丁寧に表現した丁寧語であるとする向きもありますが、単なる名詞に過ぎないとも言われています。
「当」は「釣り合う」という意味
「当」は本来「互いの価値が見合う=同レベル」という意味を示していました。現在では「釣り合う」という意味に派生し、名詞の上について「あたる・あてはまる・釣り合う」を意味します。物事の中心にあたる本人を示す「当人」「当事者」は「ちょうどその人」「この人」という意味で使用されています。「釣り合う」という意味のとおり、対等な立場の相手に対して使う、と覚えておくといいでしょう。
「当社」は主に社内で使う
「当社」はへりくだって言う単語ではないので、基本的には社外より社内で使うのが適切です。「当社」も口語表現や文語表現として使うことができるので、社内広報などの社内向けの文書や、社内プレゼンなど身内に向けて話すときによく用いられます。
「弊社」と「当社」のよくある間違い
「弊社」と「当社」は立場によって使い分けができますが、たまに立場がよくわからなくなって言い間違えてしまうケースもあります。ここでは「弊社」「当社」の使い方でよくある間違いをご紹介します。
相手の会社を「弊社」と言ってしまう
正しくは「御社」と言うべきところを、「弊社」と間違えてしまう人は多いようです。漢字の画数が多いため見たときの印象で誤って覚えてしまうこともありますし、普段使い慣れない言葉だけについ口走ってしまうということもあるでしょう。
「弊社」を自社内で使ってしまう
「弊社」も「当社」も同じ自社を指す言葉であるため、社内での会話で「弊社」を使ってしまう人も少なくありません。まったく間違いではありませんが、「弊社」はへりくだっていう言葉なので、社内であえて使う必要もないでしょう。
「当社」を相手先に使うときは注意
対等の立場を示す「当社」をあえて相手先の企業に使う場合もあります。例えば競合他社などに対し「当社」を使うことで、「自社と同等の立場にある」という意思を競合他社に示す、といったケースです。
そういった意図がまるでない客先などに「当社」と言ってしまわないよう、使い分けに気をつけましょう。
「弊社」と「当社」の類似表現
「弊社」「当社」以外にも自社を表現する単語があります。使い方は少しずつ異なるので違いを知っておきましょう。
親しみやすさを強調する「私ども」
「私ども」という言い方はやや砕けた表現になり、親しみやすさを出すときに使われます。特に年配の男性などは、表現を柔らかくするという意味でも使うと効果的。文章よりも口語で使用する場面が適しています。
「弊社」との使い分けとしては、「弊社」は企業に対して、「私ども」は個人に対して使うのがベスト。「弊社」は企業同士の間柄であることに対し、会社という組織を「私ども」と表現することで個人に寄り添う姿勢を示すことができるからです。
「わが社」「小社」
相手先に対して自社を表現するのに、「弊社」の次にかしこまった言い方になるのが「わが社」「小社」です。一概に言い切れませんが、「わが社」は役員など地位の高い人が使うイメージが強いかもしれません。「小社」は口語で使うと「商社」とややこしいので、文語で使うのがおすすめです。
「小社」は「弊社」と同様に自社を謙遜していう言葉です。謙遜する必要のないときは使わなくてもいいでしょう。謙遜する必要がないときは「当社」「わが社」などを使うのが適切です。
「自社」はやや丁寧さに欠ける
自分たちの会社を示す「自社」は、「当社」に比べるとやや丁寧さに欠けるので、対外的に使う単語としては不適切かもしれません。相手に対して使うより、第三者が使うことの方が多いでしょう。「自社開発」など名詞につけやすいのも特徴です。
身内で使うときには、目上の人が相手でも「自社」を使うことができます。自分も目の前の目上の人も同様に勤めている会社、という意味で「自社」を使います。
「弊社」「当社」を用いた例文
ここで実際に「弊社」「当社」をどんな場面で使えばいいのか、例文を見てみましょう。
「弊社」を使った例文
「先日はお忙しい中、弊社にお越しいただき誠にありがとうございました」
「次回訪問の際は、弊社新入社員をご紹介させていただきたく存じます」
「弊社社員一同精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「当社」を使った例文
「当社顧問弁護士へ相談のうえ、法的対処へと切り替えさせていただきますのでご承知おきください」
「当社といたしましては、いま以上の譲歩は致しかねます」
「今年で当社も創立40周年を迎えます」
「弊社」「当社」の使い分け方を覚えよう
「弊社」「当社」の違いについてまとめました。「弊社」は自分の会社をへりくだって言う言葉で、主に客先の企業や顧客に対して使います。一方「当社」は身内で自社を示すときや、立場が対等な相手に対して使います。
意味をしっかりと理解して、臨機応変に使い分けできるようにしておきましょう。
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September 03, 2020 at 02:23PM
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